スペイン映画はおもしろい。
"Todo sobre mi madre" や"Volver"などのアルモドバルの作品は日本でも有名だし、ペネロペ・クルスやハビエル・バルデムも役者として同様に有名だ。
とはいっても、やはりこちらの映画館で上映されている映画の大半はハリウッド。
そしてこれらスペイン語ではない映画は吹き替え版を上映するのが、スペインでは主流。
一般的にヨーロッパの人はみな流暢に自国語と後数か国語は使いこなすようなイメージがあるが、スペイン人の英語力に関しては、ヨーロッパでは最低レベルだろう。
つまり、英語の映画を字幕だけで上映しても、観客が動員できないらしい。
しかし全ての映画を「スペイン語」に吹き替えると言っても、前にも書いた通りスペインにはカタルーニャ語、ガリシア語、バスク語といったそれぞれの地域特有の言語があるため、全てをカスティーリャ語に吹き替えるとこれらの地域が反発はしないのか。
と考えていたら、面白い新聞記事を見つけた。
記事の要約は以下の通り。
フランコ独裁も終わり、各地域のアイデンティティーが確立され始めるころ当時のカタルーニャ州首長はカタルーニャのアイデンティティー回復のために「カタルーニャ語正常化法」というものを積極的に推進した。 まず彼はカタルーニャ語をバルセロナ五輪における国際公用語として、1998年には「外国映画のカタルーニャ語吹き替え条例」というものを制令化した。 この条例の内容は、カタルーニャ州内で上映される外国映画はカタルーニャ語に吹き替えないとその映画の製作会社、配給会社、上映映画館などすべてに罰則、罰金を科すというもの。 もちろんこの条例にはカタルーニャ映画館同盟やアメリカのワーナー、コロンビア、フォックスなどのハリウッド映画界が大反発。 基本的にハリウッドは欧州向けの映画は仏、独、西、伊という4か国語に吹き替えているが、これにカタルーニャ語が加わると、更にコストが嵩む上に、同様に他の地域が吹き替えを求める際の前例をつくることになってしまうため、ハリウッド側も必死だった。 結局カタルーニャ高裁において、ハリウッド映画側が勝訴、政権側も上訴しなかったため、この問題はこれで終わりかと思われた。
しかし時は経ち2010年。 今度はカタルーニャ左派連合政権が「新カタルーニャ映画法令」というものを議会で承認させた。 内容は2011年からカタルーニャ州内の外国映画の50%をカタルーニャ語に吹き替えることを義務付け、従わない場合は4千~7万5千ユーロの罰金を科すというもの。 もちろん今回も映画館やハリウッドが大反発をし、今年の2月にはストライキを起こし、映画館を閉鎖した。 その後左派連合政権が倒れ、穏健的民族主義派の政党が政権を取ると、ハリウッド側との話し合いがなされ、ようやく9月に和解と合意が成立。 合意の内容は、前政権が科した罰則、罰金を無効にして廃止し、2012年には合意の下で外国映画25本をカタルーニャ語に吹き替え、徐々にその本数を引き上げていくというものである。
前述のとおり、スペインには独自の文化、言語を持つ地域がいくつか存在するが、その中でもカタルーニャは民族意識が強い。
バスクなどもかなり強い民族意識があるが、ETAによるテロ行為などによる、そのような強い民族意識から民意が徐々に離れて行ってしまった。
しかし、カタルーニャ州にはバルセロナというスペインの一大経済拠点が存在する。
そのため他の地域と比べて、地域の自治やこのような言語政策を提示した時にスペイン全体に与えるインパクトのようなものは遥かに大きいのだ。
政治の中心であり首都でもあるマドリードにはマジョリティーであるカスティーリャ語話者が、一国の経済を担っている他方の中心であるバルセロナにはカタルーニャ語や自らの文化を持つ人々が住んでいる。
このような捻じれの関係がこの二大都市にはあり、これまでこの国で起こる様々な問題の原因になってきた。
余談だが、"El Clasico"と呼ばれるFCバルセロナ対レアル・マドリードのダービー戦にスペイン中が熱くなるのもこのような両都市の関係を理解していれば、なんとなくわかる。
高校時代に留学していたベルギーでもこのような地域主義の対立はあったし、今もそれが原因で内閣さえ組閣できないような状態が続いている。
主要因は南部のフランス語圏と北部のオランダ語圏の文化的、経済的対立。
歴史的にはフランス語圏が産業も発展し、フランス文化圏であるという利点も生かしベルギー内での文化的優位も誇ってきた。
しかし、その産業も大部分を酪農や農業に依存していたので徐々に衰退し、反対にオランダ語圏が対外交易によって富を蓄え、経済的に豊かになり、今に至る。
僕が住んでいたのはオランダ語圏であった。そしてオランダ語圏の極右政党の言い分は噛み砕けばこのようなものだった。
オランダ語圏の人がいくら金を稼いでも所得分配により、フランス語圏の貧しい人々に金を持って行かれるだけである。しかも、南部は経済的な優位がないくせにフランス語とフランス語圏文化にしがみ付いているだけだ。俺たちはオランダ語もフランス語も話せるけど、南部の人たちはフランス語しか話さないし、オランダ語を学ぶ気がないじゃないか。
ここでもスペインの場合と同じような、文化的な中心と経済的な中心の対立が存在している。
うん、おもしろい。
この頃なんとなく、今まで生きてきた21年間で経験した一つ一つの点がちょっとずつ繋がってきているような気がする。
何かに導かれてるような気もするんだけど、先が見えるわけじゃあない。
留学前に決心したように、とりあえずは目の前のことに必死になって取り組みつつ、たまに頭を上げて先を見据えてみる。それしか今はできないね。
マドリードの街も、はやクリスマスの雰囲気。
夜にはイルミネーションが輝き、もうクリスマスプレゼントなどを買う買い物客で市内中心部は人、人、人。
スペイン人の友人に「イルミネーション点けるの早くない?」と聞いたら、「いや、これでも経済危機によって点灯は遅くなったんだよ」と言っていた。
確かにこんなに街全体をライトアップしたら、一晩にかかる電気代もバカにならないだろうに・・・
ちょっと写真載せときますね。
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